ナン・ゴールディンが受賞した「ウーマン・イン・モーション」賞の全貌
2025年7月8日、フランスのアルルで開催される国際写真フェスティバルで、アメリカの著名なアーティスト、ナン・ゴールディンが「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードを受賞します。アルルの古代劇場で行われる授賞式において、ゴールディンは自身の作品を紹介し、これまでの人生や社会に対する視点を観客と共有する予定です。また、彼女の代表作《Syndrome de Stendhal》も展示されます。
ナン・ゴールディンは、女性たちの表現を男性中心の文化から解放する作品を通じて高く評価されています。彼女の親密で切実なポートレートは、家庭内暴力や欲望、または社会的孤立といった厳しい現実を浮き彫りにし、ジェンダーに対する既存の固定観念を見直させます。彼女の代表作である《The Ballad of Sexual Dependency》は、恋人同士の関係や支配の複雑さを描写し、長い間無視されてきた女性やコミュニティの声を代弁しています。昨今の社会問題に真摯に向き合い、解放を称えるゴールディンの姿勢は、見る人々に強いメッセージを伝えています。
展示される作品《Syndrome de Stendhal》は、スライドショー形式で構成され、ゴールディンの友人や恋人のポートレートが古典的な名作と重ね合わされます。この作品は、オウィディウスの『変身物語』からインスパイアを受けたもので、神話の登場人物に彼女の友人たちを見立てています。特に注目すべきは、サウンドウォーク・コレクティヴによるオリジナルの音楽が施され、そこにミカ・レヴィの音楽が加わり、視覚だけでなく聴覚でも楽しませてくれるという点です。作品のタイトルにもなっている「スタンダール症候群」は、美しさがもたらす強烈な感情を象徴しています。
受賞に対し、ゴールディンは「このような賞をいただくことができて光栄です。私が敬愛する女性写真家たちと同じ舞台に立てることを誇りに思います。アルルは私のキャリアに多大なる影響を与えてくれた場所であり、再び戻ることができて感無量です」とコメントしています。
ケリングは2016年からマダム・フィガロ・フォトグラフィー・アワードを通じて新たな才能を支援し、さらに2019年には「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードを設立しました。この賞は、女性写真家のキャリアを讃え、受賞者の作品がフェスティバルのコレクションに収蔵されることで、その活動が次の世代へと繋がることを期待しています。
今までに授与された写真家には、スーザン・マイゼラス、サビーヌ・ヴァイス、リズ・ジョンソン・アルトゥール、バベット・マンゴルト、ロザンジェラ・レンノ、そして2024年の受賞者の石内都などがいます。これからも、ケリングは女性の表現を支援し続けるために尽力していくでしょう。
ナン・ゴールディンの活躍を通じて、私たちは女性の表現の重要性や、芸術における平等について改めて考えさせられます。彼女は過去45年にわたり、現代写真の分野で忘れられない作品を数多く生み出してきました。それは、彼女の作品がジェンダーやコミュニティーの概念を問い続けるものであるからです。今後の彼女の活動と「ウーマン・イン・モーション」プログラムの進展にも、ぜひ注目していきましょう。