銀座で唯一の大島紬の魅力
株式会社銀座もとじがスタートした「銀座生まれの大島紬」の取り組みは、織りのプロセスを体感できる新しい形の着物作りを提案しています。このプロジェクトは、2017年に始まりましたが、新型コロナウイルスの影響で一時中断されていました。しかし、持続可能な視点を取り入れた再始動が実現しました。今回は、銀座での織り子の確保が困難な時期を乗り越えた結果として、また新しい価値観を持ってこの素晴らしい物を体験できる機会が設けられました。
自分だけの着物を育む
現在、制作されているのは、特に人気がある「龍郷柄」の反物です。この柄のデザインは、奄美大島の自然からインスパイアを受けたもので、ハブの模様やソテツの葉が取り入れられています。銀座もとじでは、訪れた人がその反物が織られていく過程を見守ることができ、自らが「迎え手」としてこの体験に参加できます。制作は週に2日行われ、その進捗は織り子から丁寧に報告されます。
店頭では、実際に織られていく様子を間近で観察できたり、織り子と直接会話しながらその成長を見られる特別な時間も提供されています。この体験は、自分自身が一つの反物を育てるかのような親密さと共に、愛着がより深まります。
特別な「織り上げ式」
反物が完成すると、「織り上げ式」という特別な儀式が行われます。この儀式では、迎え手が織り子と共に鋏を入れて反物を織機から外すことになります。この瞬間は、まるで赤ちゃんのへその緒を切るかのような神聖な行為であり、特別な思いを持った一枚が誕生します。
里帰りの旅へ
完成した反物は、その後奄美大島に送られ、正式な検査や認定を受け、証紙が貼付された状態で銀座に戻ります。このような一連のプロセスを経て、生まれた唯一無二の着物を手に入れることができます。さらに、この特別な着物を着て奄美大島の龍郷町を訪れることも奨励されており、職人たちの手による染めや糸づくりの現場を直接見る貴重な体験も提供されます。
サステナブルな選択
今日、物が簡単に手に入る時代だからこそ、手間暇かけて一つのものを丁寧に育てることの価値が見直されています。着物は親から子、そして孫へと受け継がれる文化を体現しており、それ自体がサステナブルな存在です。このプロジェクトを通じて、自分だけの特別な着物を持つことがもたらす喜びと、そこに込められた物語に触れることができるでしょう。
龍郷町町制施行50周年とのパートナーシップ
また、このプロジェクトは大島紬の発祥地である奄美大島・龍郷町の町制施行50周年を記念した催しでもあります。2025年には「大島紬 挑戦の軌跡」という展示が銀座もとじで行われる予定です。時代の中で進化を続けてきた大島紬の歴史を、反物や作品、実演を通して紹介されるこの展示は、着物の魅力を再発見する絶好の機会です。
まとめ
この「銀座生まれの大島紬」は、ただの着物ではなく、手作りの温もりと価値を持つ一枚です。自分の手でその成長を見守り、一緒に旅をすることで、着物への愛着が生まれます。そしてその愛着は、未来へとつながるサステナブルな選択でもあります。この機会に、自分だけの特別な着物を育てる旅に出かけませんか?