H&Mグループの脱炭素化に向けた前進
2025年6月5日、H&Mグループがベトナムの繊維・アパレル産業における脱炭素化への重要な一歩を踏み出しました。具体的には、ベトナムで初となる電化による蒸気発生型ヒートポンプ設備のプロジェクトが発表され、持続可能な製造姿勢が一層強化されます。この取り組みは、サステナビリティを推進するApparel Impact Institute(Aii)やWWF(世界自然保護基金)との連携のもとで進められています。
プロジェクトの中心地であるのは、ハノイ近郊のフンイエン省に位置するBangjie社の縫製工場です。ここでは、ニット製品の染色や乾燥に必要な熱エネルギーを、従来の石炭由来ではなく電力を用いて供給します。これにより、工場全体のエネルギー需要が電化されると同時に、H&Mグループが2030年までに掲げる温室効果ガスの排出量56%削減を実現する助けになるでしょう。
繊維業界における革新
繊維業界では、熱エネルギーが総エネルギー使用量の50%以上を占めており、特に染色や洗浄、乾燥といった工程では、大量の蒸気が不可欠です。在来型の発電方式に依存せず、工場内で発生する廃熱を最大限活用することで、熱効率の向上とともに温室効果ガスの排出削減が期待されています。
この取り組みは、Aiiが策定した「Low Carbon Thermal Energy Roadmap」に基づいており、繊維業界の中での先駆的な事例として注目を集めています。今後、さらなるスケールアップと投資回収も狙い、このモデルがベトナムだけでなく東南アジア全体に波及することが期待されます。
環境保護の視点を持つ関係者のコメント
WWFのリチャード・スコットニー氏は、「産業用の熱エネルギーの電化は気候変動対策の核心であり、この取り組みはその実現の好例です」と述べました。サプライヤーやブランド、資金提供者、NGOが協力することで、産業の変革が現実にできることを示しています。
また、H&Mグループの気候担当マネージャーであるキム・ヘルストロム氏は、「完全な電化こそが長期的な気候目標を達成する唯一の方法です」と強調しました。このプロジェクトが特に染色のような電化が難しい工程での転換の可能性を示す重要なマイルストーンであるというのです。
Bangjie社のゼネラルマネージャー、ヴィンセント・ワン氏も、「この先進的なヒートポンプシステムを導入できることは大きな名誉です。持続可能性への取り組みを強化し、繊維業界全体の転換につながる第一歩を進めていきます」とコメントしました。
H&MグループとWWFの連携
H&Mグループは2011年からWWFとの戦略的パートナーシップを築き、環境負荷を低減する取り組みを進めています。このプロジェクトは、そうした活動の一環として位置付けられています。さらに、Aiiは環境影響を削減するために資金提供や技術導入支援を行う非営利団体として、業界全体に対する影響を持つ活動を行っています。
この新しいプロジェクトにより、ベトナムの繊維産業がどのように進化していくのか、そしてそれが気候変動に与える影響について、今後も注視が必要です。