日本の伝統発酵技術が未来を変える!麹菌の新たな可能性を探る
最近の研究で、日本の伝統的な発酵食品作りに欠かせない麹菌(A. oryzae)の新たな可能性が明らかになりました。株式会社オリゼと金沢工業大学が共同で行った研究が、2025年10月に開催された「令和7年度日本醸造学会大会」において発表され、注目を集めています。
研究の背景と目的
麹菌は、アミラーゼやプロテアーゼ、リパーゼなど、多様な酵素を生成し、発酵食品の品質に大きく関与しています。特に甘酒や発酵甘味料の製造においては、酵素活性が甘みの生成に直結するため、最適な菌株の選定が重要です。本研究の目的は、実用的な麹菌のアミラーゼ活性を解析し、甘酒や甘味料の生産性向上に向けた新しい知見を得ることにありました。
研究方法
研究では、実用麹菌8株と基準株であるA. oryzae RIB40を比較しました。
1.
対象菌株の選定:実用株は株式会社ビオックから供与されたものを使用。
2.
アミラーゼ活性の測定:キッコーマン社の測定キットを用いて、米麹から抽出した液体のアミラーゼ活性を定量化。
3.
遺伝子解析:各株からDNAを抽出し、qPCRでコピー数を測定、PCRでα-amylase遺伝子構造を比較しました。
研究結果
糖化酵素活性の比較
分析の結果、8種の実用株においてアミラーゼ活性に顕著な差が確認されました。特にいくつかの株では、活性値が2倍の差が見られ、高い酵素活性を持つ株が存在することが判明しました。
コピー数解析
rDNAのコピー数の違いによって、実用株と基準株が異なる遺伝系統に属する可能性が示唆されました。
遺伝子構造の解析
RIB40株は、すでにゲノム情報が知られており、3つのα-amylase遺伝子(amyA、amyB、amyC)を抱えていることが確認されています。本研究によって、実用株とRIB40株の遺伝子構造に違いがあることが示されています。
今後の展望
今後の研究では、以下を目指して進められる予定です:
- - 麹菌の育種や改良による酵素の発現の最適化
- - 発酵プロセスの効率化
- - サステナブルな甘味料生産技術の確立
今回の研究で得られた知見は、麹菌の特性を活かした新たな食品作りに大いに役立つことでしょう。これからも、伝統的な発酵技術が新たな価値を生み出し、社会課題の解決につながることが期待されています。
発表概要
- - 学会名:令和7年度日本醸造学会大会
- - 会期:2025年10月7日〜8日
- - 発表演題:甘味料製造に資する麹菌実用株の糖化酵素遺伝子などの比較解析
本研究を通じて伝統技術が持つ力を再認識し、それを活かした未来の製品開発に注目が集まるでしょう。これからの日本の食品産業における発酵文化の可能性は、ますます広がっていくに違いありません。