フィード・ワンが挑むマダイ養殖の未来
フィード・ワン株式会社(横浜市西区)は、2023年8月から新たなマダイ養殖の効率化への挑戦を開始しました。その核心は、一定期間の給餌制限後に再給餌を行うことで活性化する「補償成長」のエコロジーを利用することです。この試みは、養殖業における生産コストの削減や高水温時の死亡率低下の改善につながることを期待されています。
新たな養殖業の方向性
近年、魚粉の価格高騰や海水温の上昇が続いており、これが養殖業の経営に厳しい影響を与えています。飼料に使用するイワシの漁獲制限や国際市場での為替の変動が原因です。フィード・ワンは、こうした問題を受けて、2024年4月から「高知県飼料削減技術開発等事業」に参加し、地域の養殖業者と協力して新しい飼育哲学を導入しています。
補償成長とは何か?
「補償成長」とは、食事制限の後に、体重が急激に回復する人間のリバウンド現象に似ています。養殖魚に一時的な給餌制限を行った後、再給餌をすると、通常の成長率を越える成長が確認されることが期待されます。フィード・ワンでは、2023年と2024年の実証実験を通じて、この現象を活用した飼養管理技術の導入を目指しています。
実証実験の成果
2023年の試験では、3週間の給餌制限が実施され、結果として18%の飼料削減が実現されました。増肉率も32%も低下し、コスト削減が顕著となりました。さらに、実験区の魚体重が対照区を追い越す結果も得られており、この手法が養殖経営に明らかにプラスの影響をもたらすことが示されています。
2024年の続く実証実験では、水温上昇時の影響を考慮しながら、最適な給餌制限のタイミングを探ることが課題となっています。特に、28℃以上の水温に達した時点での給餌制限が効果的であることが確認されました。
参加者の関心も高まる
実証試験の成果は、2025年2月に高知県で行われた報告会上で発表され、多くの養殖業者が集まりました。参加者たちは「給餌制限を行う際の注意点」や「再給餌時の給餌量」についての質問をし、このプロジェクトに対する熱い関心を示しました。
今後の展望
フィード・ワンは、今後も「補償成長」による効率的なマダイ養殖の技術を推進し、高水温の影響を緩和するための対策技術を探求していく方針です。持続可能な養殖業が求められる現代において、こうした取り組みはますます重要になっていくでしょう。水産業界の持続可能性や効率改善に貢献することで、未来の食卓を支える役割を果たしていくことが期待されます。