久留米絣×豊橋前掛けの新たな挑戦
日本の伝統技術を活かしたワークジャケット「KASURI JACKET」が、久留米絣(福岡)と豊橋前掛け(愛知)の産地間コラボレーションで誕生しました。この取り組みは、シャトル織機の特徴を最大限に活かしたサステナブルな製品づくりを目指しています。2025年にはパリの「Maison et Objet」での成功を受け、2026年には北米市場への進出も計画されています。
ワークジャケット「KASURI JACKET」の誕生背景
このプロジェクトは、エニシングの主導によって始まり、パリで高評価を受けたジャケットデザインを基盤にしています。衣類の製造において特殊な糸を利用することで、環境への配慮もなされています。具体的には、括り糸という工程で生じる糸の使用を徹底し、アップサイクルを実現しています。この取り組みにより、豊橋前掛けの強靭な帆布文化と久留米絣の魅力が融合し、新たな価値を生み出しています。
海外で評価を受けた「KASURI JACKET」
「KASURI JACKET」は、2025年9月にパリで発表され、約35着の受注を獲得しました。フランスからは、アルチザン性とアフォーダブルな価格という評価を受け、国際市場でのニーズに合った魅力的な製品として認知されました。そして、10月14日には東京で報告会が行われ、フランスでの経験や市況の解説に加え、共同開発の意図についてのトークセッションも実施されました。
北米展開の計画
2026年には、坂田織物が中心となり、フロリダでのPOP UPやニューヨークのネペンテスNYでの展示販売、さらにはパーソンズ美術大学での特別授業を企画中です。これにより、日本の工芸が国際市場での実用性と文化的価値を示す姿が期待されています。
シャトル織機の現状とその魅力
日本のシャトル織機産業は、かつて約2万5千台あった機械が2022年には1万台弱にまで減少しました。しかし、シャトル織機特有の柔らかな風合いや美しいセルビッジが再評価され、世界中のブランドがその希少な生地を求めています。これは、効率が低いにもかかわらず、繊維の本来の性質を生かした製品が作り出せるからです。
社会的意義と新たなモデル
今回のプロジェクトは、地域経済や技術継承にとって深刻な課題であるシャトル織機の存続に新しい可能性を示しています。久留米と豊橋、両地域が連携することで、異なる技術や文化を融合し、より高い市場価値を生み出す新モデルを作り上げています。
また、フランス・パリでの実績を通じて、海外の消費者に日本の工芸の魅力を直接伝えていくことが可能になります。これは、日本国内にとっても大切な学びとなり、工芸の未来を見据える上で重要なデータとなるでしょう。
東京報告会の開催概要
2025年10月14日、東京・新宿にて報告会が開催されます。内容としては、フランスでの体験やマーケット動向に加え、開発に至った背景が語られます。新作「KASURI JACKET」の試着会も実施され、参加者はジャケットの質感や着の心地を体験することができます。
このように、久留米絣と豊橋前掛けの驚くべき取り組みは、国際市場での日本の工芸の未来を照らし出す可能性を秘めています。これからも彼らの冒険を注視していきたいですね。