魅力あふれる新ブランド、極寒ぶり®の誕生
北海道白糠町にある白糠漁港で、2025年9月8日、漁師たちのための特別な勉強会が開催されました。この取り組みは、天然ブリに関する「船上活締め技術」を学ぶもので、多くの漁師たちがその実演を目の当たりにしました。参加したのは約40名。彼らは日々の漁業の現場で直面している新しい課題に対し、真剣に向き合っています。
この日は、株式会社TORETATEの倉本満隆代表が講師として招かれ、ブリの鮮度を保つための技術を伝授。「天然ブリ」を高品質に創り出すための重要なステップとなるこの講習会は、白糠町が抱える「今の海と向き合う姿勢」を象徴しています。
漁業の現状と変わる海の中で
ここ数年、北海道の漁業において重要な問題が浮上しています。特に白糠町では、秋鮭の水揚げ数が減少傾向にあり、一方でブリの漁獲量は増加。これは、地球温暖化や赤潮など自然環境の変化によるものです。これまで「秋の風物詩」として親しまれていた秋鮭が少なくなる中で、漁師たちは新たに現れたブリに目を向けることになりました。
長い間「やっかいもの」とされてきたブリですが、地元における需要のない存在だったため、漁師たちは獲れても何もできない状態でした。しかし、2022年に立ち上げられた「極寒ぶり®」プロジェクトが、ブリをブランド化し、価値を引き上げる新たな流れを生み出すことになります。
極寒ぶり®の確立と取り組み
「極寒ぶり®」の生まれるきっかけは、料理人による「白糠の魚は素晴らしい」という評価から始まりました。株式会社イミューは、このブリをただの水産物ではなく、地域資源として育てることを決意。具体的には、魚体の重さが7 kg以上であること、漁師が船上で活締め処理を行うこと、そして鮮度を保ちつつ迅速に冷却・保存することが求められます。
この基準をクリアしたブリには「極寒ぶり®」の名が付与され、通常の浜値の約6倍の価格で買い取られるようになりました。こうした取り組みが奏功し、2022年のふるさと納税の返礼品としても好評を博しました。
町全体の変化と漁師の意識
2023年には新しい水産加工工場が町内に完成し、漁業における品質保持と安定出荷が可能になりました。さらに、漁師たちの技術向上を目的とした勉強会も開催され、徐々に新しい姿勢が浸透しています。
白糠漁業協同組合の山田組合長は、「この数年で漁師たちの意識が変わり、積極的にブリに取り組む姿が見られるようになった」と語ります。漁師の雲津知成さんも、「今まで獲れなかった魚が増えてきたことを受け、こうした勉強会が有効だと思う」と希望の声を上げました。
地域と未来を結ぶ新たな挑戦
白糠町は「変わりゆく海と向き合う」という姿勢で、持続可能な漁業の未来を築く取り組みを続けています。極寒ぶり®は、ただの一品のブランドではありません。漁師たちがその漁業を誇りに思い、地域全体の新たな可能性を示す存在へと成長を遂げているのです。
白糠町の漁業には、新しい文化と挑戦が根付いています。今後もこの変化を恐れず、町全体で手を取り合って進んでいく姿勢が重要です。私たちも、その姿を応援し続けたいと思います。