中川政七商店が描く新たな工芸の風景
1726年に奈良で創業した中川政七商店が、このたび国際的な認証である「B Corporation™」(通称:B Corp)を取得しました。これは、社会的責任を果たす企業として認められるもので、環境や地域社会への貢献を重視する企業に与えられる名誉です。中川政七商店は、工芸の魅力を未来に繋げるための新たな挑戦を始めています。
工芸の循環プログラムの始動
2026年1月より、中川政七商店は「工芸のしまいかた」をテーマにした循環プログラムをスタートします。このプログラムは、使われなくなった工芸品を回収し、修復して再流通させることを目的としています。工芸の文化を支える作り手や原材料の再生産に寄与することで、持続可能な社会を創造する取り組みです。
長い歴史を有する中川政七商店は、工芸というものづくりの根底には、手仕事ゆえの丁寧な作り手の心が込もっています。しかし、工芸の現場では自然素材が枯渇するなどの深刻な現実が進行しています。そこで着想したのが、この循環プログラムです。工芸品の使用を終えた後、どう終わらせるかを見つめ直し、次の世代にも繋いでいく、「つくる・つかう・終わらせる」のサイクルを作ることが求められています。
プログラムの具体的な仕組み
- - 回収対象:使用されなくなった中川政七商店製品(陶磁器など)
- - 回収経路:店舗での直接回収
- - 修復方法:金継ぎや染め直しを行い、新たに再販売
- - 新商品開発:修復が難しいものは原材料として再生し、新たな商品に活用。
商品回収の際には、購入者からの思い出やメッセージを記入でき、そのメッセージが次のユーザーへと引き継がれます。このようにして、ただの物質ではなく、思い出や情熱が息づく工芸品として、次の世代へと受け継がれていくのです。
B Corp認証取得の意義
このB Corp認証は、ただの評価以上の意味を持っています。中川政七商店は「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げており、このビジョンに基づいた実践を通じて、地域社会とのつながりを深めています。企業の健全な持続可能性を追求する姿勢は、地域と共に歩むビジネスモデルの確立へと繋がっていくでしょう。
中川政七商店は今後も、継続的に課題を改善し、次世代の工芸が育まれる環境を作っていく決意を持っています。工芸品が持つ意味や価値を伝えることは、社会全体に良い循環を生む力を持っています。
結びに
B Corpという国際基準を持ちながら、地域に根付く中川政七商店が新しいビジョンを発信することで、工芸の可能性が広がります。このような取り組みが、より多くの人々に影響を与え、持続可能な暮らしの実現に寄与することを期待しています。この歴史ある企業が今後どのように進化していくのか、その成長に目が離せません。