ロレアルと日光ケミカルズが示した皮膚常在菌の新洗浄機構
世界の化粧品業界で名高いロレアルグループの日本における研究拠点「ロレアル リサーチ&イノベーション ジャパン」と、日光ケミカルズが共同で行った研究が注目を集めています。彼らは、皮膚常在菌によって形成される「バイオフィルム」の洗浄機構に関する画期的な成果を発表しました。この研究成果は、2025年の油化学会年会やコロイドおよび界面化学討論会においても取り上げられる予定です。
皮膚常在菌とバイオフィルムの影響
私たちの肌には、アクネ菌などの常在菌が存在していますが、これらの菌は高分子を分泌し、バイオフィルムというしっかりとした構造体を形成します。このバイオフィルムは、アトピー性皮膚炎やにきびなど、さまざまな皮膚疾患の炎症を悪化させる原因となるため、その除去方法を見つけることは非常に重要です。しかし、バイオフィルム内には複数の微生物が共生しており、その構造は洗浄剤の浸透を阻むため、取り除くことは簡単ではありません。
研究のアプローチ
研究者たちは、シリカ基板上にアクネ菌のバイオフィルムを形成し、あらゆる種類の洗浄液を使い、せん断流を用いて洗浄を試みました。その結果、ただ浸すだけではバイオフィルムは剥がれませんでしたが、イオン性合成界面活性剤の「ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)」やバイオサーファクタント「ラムノリピド(RL)」では、せん断流の速度が上がるにつれて、洗浄効果が顕著に増加することがわかりました。特に、20ml/sの速度ではバイオフィルムがほぼ完全に剥離しました。一方で、非イオン性合成界面活性剤の「Tween 20」では流速にかかわらず効果が薄い結果となりました。この違いは、各界面活性剤の分子構造に起因しているとされています。
リン脂質の役割
さらに研究は進み、皮膚常在菌である黄色ブドウ球菌で形成されたバイオフィルムについても調査が行われました。リン脂質で表面を被覆した基板上でバイオフィルムを形成した結果、リン脂質の有無にかかわらず同程度のバイオフィルムが形成されることが確認されました。しかし、リン脂質の被覆率が増すことで、洗浄の効率が高まることもわかりました。このことは、リン脂質がバイオフィルムの除去を促進する可能性を示唆しており、今後はリン脂質を基にした新しいスキンケア製品の開発が期待されます。
ラグジュアリーブランドとの連携
ロレアル リサーチ&イノベーション ジャパンは、1983年から日本での研究開発を開始し、現在は400名以上の研究者が参加しています。ここで生まれる革新的な技術は、ランコムやシュウ ウエムラ、キールズなどのラグジュアリーブランドに活かされ、多様な製品開発に貢献しています。
この共同研究がもたらす新しいスキンケア製品の未来に、私たちは大いに期待したいと思います。