新発見!麹菌の有性生殖への道を拓く未知の構造体とは?
最近の研究で、麹菌として知られる
Aspergillus oryzaeにおいて、これまで見つかっていなかった新しい構造体が発見されました。この成果は、東京科学大学と株式会社ぐるなびが進めている共同研究の一環で、2025年10月9日に発表されました。
研究の背景と重要性
日本の食文化を支える発酵技術において、麹は欠かせない存在です。清酒や味噌、醤油の製造には注力されていますが、これまで麹菌は有性生殖を行わないと考えられてきました。しかし、長年にわたる研究の中で、近縁種には有性生殖の機構が存在することが確認されています。
結果の概要
本研究では、約80種の麹菌ライブラリを基に徹底的な観察が行われ、菌核内部に新たな構造体があることが確認されました。この構造体は、近縁種で見られる子嚢果に似ており、麹菌にも潜在的な有性生殖の能力があるのではないかという見解を示しています。つまり、これまでの常識が覆される可能性があるのです。
発見のプロセス
研究は全国の種麹屋の協力を得て行われ、特殊な培養条件下で「オス」と「メス」の株を組み合わせることで、新しい内部構造体が形成されることがわかりました。この結果により、麹菌が生来的に有性生殖を行える能力を保持している可能性が指摘されました。
突然変異からの脱却
従来、麹菌は無性的な増殖と突然変異によってのみ進化してきたため、改良には限界がありました。突然変異による育種には潜在的な不都合な変異が含まれる点が問題視されてきましたが、有性生殖が可能になることで、より良い麹菌を作り出す道が開かれるかもしれません。
文化的・経済的影響
麹菌の利用は1200年以上続いており、その間、ずっと無性生殖しか行われていないと信じられてきました。この発見は、日本の発酵産業に多大な影響を与える可能性があり、麹菌の育種戦略が根本から転換されることが期待されます。
今後の方向性
今後の研究では、麹菌の有性生殖を実現するために必要な条件や因子を特定し、麹菌の育種をより効率的に行う方法が模索されます。また、分子生物学的なアプローチで、麹菌がどのように有性生殖に切り替わるのかを明らかにすることも目指しています。
まとめ
本研究による新発見は、麹文化のさらなる発展に向けて大きな転換をもたらす可能性があり、今後の研究と技術の進展が期待されます。私たちが知る麹菌の新しい一面が明らかになるかもしれません。健康で多様な発酵食品が生まれる未来に向け、今後の研究に注目です。