研究の背景
腸内環境は全身の健康に重要な役割を果たしています。近年、腸内細菌叢を整える食事が注目されていますが、特に注目すべきなのが「ラクチュロース」です。この成分は消化されずに大腸まで届き、善玉菌として知られるビフィズス菌を増加させるプレバイオティクスの一種です。ラクチュロースは、ヨーグルトや飲料、サプリメントなど多様な形態で広く利用されています。
これまでの研究では、健康な成人を対象にした実験から、ビフィズス菌を効果的に増やすには2gのラクチュロースが必要とされていました。しかし最近の研究から、ビフィズス菌がこの成分を効率的に利用できる仕組みが明らかになり、少量でも効果が期待できるとの見解が得られました。
研究方法
本研究では、健康な成人男女78名を対象に、500mgのラクチュロースの摂取が腸内細菌叢に与える影響を評価しました。研究デザインはランダム化二重盲検プラセボ対照試験で、2025年の2月から4月にかけて行われました。対象者は2群に分かれ、一方はプラセボ、もう一方は500mgのラクチュロースを含む食品を4週間摂取し、その後2週間の休止期間を経て、もう一方の食品を摂取しました。
腸内細菌叢の変化は、便サンプルを収集し、遺伝子解析を通じてビフィズス菌の占有率を比較することで評価しました。
研究結果
研究の結果、500mgのラクチュロースを摂取した場合、ビフィズス菌の割合が有意に増加しました。この増加はプラセボ群と比較して明確な差が見られ、500mgでもビフィズス菌を増やす効果があることが実証されました。また、一般的にプレバイオティクスを摂取する際に見られるお腹の緩みなどの副作用は観察されず、安全性も確認されました。
まとめ
この研究結果は、腸内環境の維持に向けて、500mgのラクチュロースが実用的な選択肢であることを示しています。これにより腸内環境を整えたいと思っている方々は、少ない用量から始めることができ、個々の体質や生活習慣に応じて量を調整することで、健康的な腸をサポートすることが可能になります。
森永乳業は1960年に世界初のラクチュロース配合育児用ミルクを発売し、以降も研究開発を重ねてきました。これからも腸の健康をテーマに、多様な製品の展開を続けていくことで、人々の健康への寄与を目指していく所存です。