新しい保湿剤評価指標の発表
株式会社ナリス化粧品は、保湿剤に関する新たな評価指標を発表しました。この発表は、2025年9月にフランス・カンヌで行われた国際学会IFSCC Congress 2025にて行われました。本指標の策定は、スキンケア製品の開発において、非常に重要な役割を果たします。
研究に至った背景
人体はおおよそ700kg/m3の水分を保持していますが、その一方で日常生活で触れる空気中の水分量は、0.1 kg/m3以下という厳しい乾燥環境です。このため、保湿剤は肌に必要な水分をしっかり保持し、肌の健康を保つためには欠かせません。従来の保湿剤評価法は、主に水分保持力や肌に施した際の水分量に依存していましたが、これでは肌自身に対する効果を十分に測れないことが課題でした。
新しい評価指標の意義
ナリス化粧品の研究チームは、保湿の目的である「水をしっかりと肌へ提供する」という観点を重視し、新しい評価基準の策定へと取り組みました。実際に、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトールといった一般的な保湿剤を比較した結果、特にグリセリンが非常に高い効果を示し、かつ肌のバリア機能を支える酵素活性を維持する傾向があることが確認されました。
これに基づき、研究チームは水分の運動に対する影響を調べるため、電磁波を利用した分光学的手法を採用。結果的に、グリセリンは水分子との結びつきがあまり強くなく、包み込むような柔軟性を持つ特徴がわかりました。
今後の展望
この新しい評価指標は、水分の蒸発抑制力だけでなく、水分子運動への影響といった新しい軸を加えることで、より効果的な保湿剤の探索を可能にします。特に、乾燥環境においてもしくは水分が必要な時に、肌からの水分喪失を防ぎつつ必要な水分を提供できる理想的な保湿剤の選定が期待されています。ナリス化粧品は、研究の進展により、我々の肌を健康に保つための新たなソリューションを提供していくことでしょう。
研究者プロフィール
発表を行ったのは、ナリス化粧品の取締役研究開発部フェロー、森田美穂氏。博士(農学)を取得し、25年間にわたりスキンケア技術の研究に従事。女性の肌の老化改善に寄与する製品開発はもちろん、国内外の学会での発表や論文発表にも力を入れています。プライベートでは小学生の母としても活躍中です。
この新しい指標が、スキンケア業界にとって重要な進展となることは間違いありません。これからの展開にぜひご期待ください。