キリンと日立が取り組む新たな環境プロジェクト
キリンホールディングスと日立製作所の2社は、2025年3月から森林由来カーボン・クレジットの創出に向けた共同研究を開始します。この研究は、森林の持つ炭素吸収能力を最大限に引き出すことを目指しており、両社の持つ先進技術を駆使して実現を目指します。
共同研究の背景
国連環境計画による「Emissions Gap Report 2023」では、2022年の世界の温室効果ガス(GHG)の排出量が過去最高となり、森林による炭素の吸収量が減少傾向にあることが指摘されています。この原因の一つには、国内の森林の高齢化があり、木々の成長が鈍化していることが影響しています。ここで重要となるのが、温室効果ガスを減少させるための森林由来カーボン・クレジットの質を向上させる取り組みです。
課題の解決に向けた取り組み
森林由来カーボン・クレジットの市場では、信頼性の高い「ジャンク・クレジット」の問題が深刻化しています。それに加え、苗木生産の事業者数が減少しており、効率的な苗木生産の技術開発が求められています。特に、高齢化が進む生産事業者の現状において、革新的な技術導入が急務です。
共同研究の内容
今回の研究では、キリンが持つ「植物大量増殖技術」と、日立の「自然計測技術及びMRVに関連するデジタル技術」が融合することで、質の高い森林由来のカーボン・クレジットの創出を実現します。キリンの技術は、従来の接ぎ木や挿し木の方法より短期間で苗木を大量生産できる方法を確立し、日立は、環境データの定量評価や申請書類の自動作成を行うシステムの開発を進めます。
将来的な展望
この研究の進展により、生物多様性の保全とGHG削減の両立が実現されることを期待しています。キリングループは「キリングループ環境ビジョン2050」に基づき、2040年までにバリューチェーン全体のGHG排出量をネットゼロにする目標を掲げており、日立も「日立環境イノベーション2050」に則ってカーボンニュートラルの達成に貢献しています。
この植林や環境保全の取り組みを通じて、両社は持続可能な社会の実現へと向かっています。双方の技術革新を進めることで、新たな生態系の保護と地球環境への貢献を目指す姿勢が際立っています。今後の進捗が楽しみです。