真皮の細胞老化と肌表面の変化
第一三共ヘルスケア株式会社は、皮膚細胞の老化が慢性炎症を引き起こし、それが肌表面に微細な凹凸を生じさせるメカニズムを解明しました。この研究は、日本抗加齢医学会総会で発表され、エイジングケアの新しい可能性を示唆しています。
1. 研究の背景
加齢が進むにつれて、肌の表面に細かい凹凸ができやすくなります。この現象は、多くの人が驚くほど肌の印象に影響を与え、年齢を感じさせる大きな要因です。加えて、第一三共の研究によれば、老化した皮膚細胞が慢性炎症を引き起こし、さらなる悪影響を及ぼすことが確認されています。この現象は「SASP」と呼ばれ、老化細胞が周囲の細胞に及ぼす影響は十分に解明されていませんでした。
そこで、研究チームは、老化した真皮の線維芽細胞がどのように表皮細胞に影響を与えるのかを探ることにしました。
2. 研究方法と結果
2.1 老化した線維芽細胞の影響
研究では、正常な線維芽細胞と老化誘導された線維芽細胞を用いて共培養を行いました。顕微鏡で観察したところ、老化モデルの線維芽細胞と共に培養した表皮モデルでは、角層が厚くなり、全体的に凹凸が増加していることが確認されました。これは、老化細胞が周囲の表皮細胞に悪影響を及ぼし、肌の凹凸を引き起こす要因になっていることを示しています。
さらに、老化モデルにおいては、角層の構成因子であるFLGや、角層成熟に関わる酵素であるKLK5、KLK7の遺伝子発現が増加していることが分かりました。この増加が適切な表皮細胞の成熟を妨げ、肌の表面に凹凸を生じさせていると考えられます。
2.2 SASP因子の関与
次に、老化した線維芽細胞が分泌するSASP因子が、表皮の機能に影響を与えるかを調べました。代表的なSASP因子であるTNFαやIL-6を中和抗体で処理したところ、角層に関わる遺伝子の発現が抑制されることが確認されました。この結果から、老化した線維芽細胞が分泌するSASP因子が表皮の細胞機能に直接的に影響を与えることが示されました。
3. 今後の展望
この研究により、老化した線維芽細胞が表皮層の厚みを増し、健全な角層の形成を妨げることで肌表面に凹凸を引き起こすメカニズムが明らかになりました。加齢によるこれらの変化が、エイジングケア製品の開発において重要なインサイトを提供しています。
第一三共ヘルスケアとしては、今後もこの研究結果を基に、皮膚の慢性炎症を抑えることの重要性を強調し、新たなエイジングケア商品の開発に取り組んでいく方針です。これにより、肌環境を整え、生活の質(QOL)を向上させる新しいソリューションを提供できることを目指します。
この研究結果は、加齢による肌トラブルの理解を深めるだけでなく、エイジングケアの新しいスタンダードを創出する可能性を秘めています。肌の老化を防ぐための手立てを考えている人々にとって、非常に有望な情報と言えるでしょう。