花王が開発した嗅覚受容体解析技術で香りの新境地へ!
世界初の解析技術「ScentVista 400」とは?
近年、花王が開発した新しい嗅覚受容体の解析技術「ScentVista 400」が話題です。この技術は、ヒトに存在する約400種類の嗅覚受容体のほとんどを培養細胞の表面に発現させ、におい物質に対する反応を網羅的に解析できる画期的なもので、科学者たちの注目を集めています。今回の研究成果は、2025年度の日本味と匂学会第59回大会で発表され、優秀発表賞を受賞する予定です。
嗅覚受容体の重要性とは?
人間の嗅覚は、約400種類の嗅覚受容体が特定のにおい物質を検出することによって成り立っています。これらの受容体は、ありふれた生活の中で数十万種類とも言われるにおい物質から特異的な香りを認識するセンサーとして機能します。これを基に、脳は様々な香りを感知し、特定するのです。しかし、従来の技術では、実際の嗅覚受容体の反応を直接確認することが難しく、実験は主に細胞培養に頼っていました。
新技術の開発の背景
多くの嗅覚受容体は、培養細胞上で不安定なため、研究者たちはこれまで正確な反応を確認することができませんでした。そのため実際に解析された嗅覚受容体は1割しかなかったのです。しかし、花王は2023年に、新しい技術を用いて嗅覚受容体を細胞表面に安定して表現することに成功しました。具体的には、アミノ酸を置き換えることで、細胞内に留まることなく、表面に安定して存在できる状態を作り上げたのです。
反応パターンの解明
「ScentVista 400」では、嗅覚受容体がにおい物質を認識する際に光を放出し、その光の強度で反応を測定します。これにより、400種類の受容体が香りや不快に感じるにおいに対してどのように反応するかが明らかになりました。たとえば、ローズオイルとゼラニウムオイルに対する反応パターンは非常に似ていることがわかりました。また、濃度によって異なる香りを発する物質に対しても、受容体の反応パターンが変化することが確認されました。
新たな香りのデザインへ
花王の「ScentVista 400」によって、嗅覚のメカニズムが理解されることで、例えば不快なにおいを心地よい香りに変換する新しいアプローチが可能になります。この技術を応用することで、消臭効果に優れた新しい香りをデザインしたり、香料の量を減らし、種類を絞ることもできるかもしれません。
今後の展望
花王は今後も嗅覚研究を進め、人々に喜ばれる香りの世界を追求していく考えです。嗅覚の本質を掘り下げ、新たな香りの発見に向けた取り組みが期待されます。これからの香りに関する研究に注目が集まる中、花王の技術革新がどのように人々の生活を豊かにしていくのか、今後の展開が楽しみです。